- 作者: 佐久間結衣
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2014/08/22
- メディア: Kindle版
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我が子はよくお化粧中に近寄ってくる。
「アタシもしたい」
断ると大騒ぎだ。ネイル中に邪魔されると、声を荒らげてしまうこともしばしば。やむを得ず、しゃぶる親指を避けてネイルしてやる。我が子は喜ぶ。すごく喜ぶ。
いわゆる“アガる”というのはコレだろう。自分がアガる瞬間は意識できても、“他人”(違う個体)である我が子が、それと見てわかるレベルで明らかに“アガって”いる。
そんなの、人生でなかなか見られるもんじゃない。
◆
我が子は保育所へ通っている。今は3歳だ。
1歳時クラスのある日。前日夜、件の大騒ぎ⇧をし、ネイルしたまま登所。登所時には何も言われなかったが、降所時に保育士さんから
「みんなしてきてないので、(ネイル)してこないでください」
と言われた。
◆◆
納得がいかず、帰宅してひととおり“ネイルの健康被害”を調べた。爪が呼吸しているから云々、という説もあるが、大半は影響ない様子。また、口に入れても大丈夫なものも今は大いに販売されている(使ったのは違ったけれど)。
翌日。我が子が(保育士に)いじめられはしまいか悩みつつ、「納得がいかない」ことを理由も込みでお便り帳に添付してクラス担任に渡した。「これが今の私たち保護者の考えです。」と添えて。
降所時、保育所の「責任者&例の発言の保育士」と3人で話すことになった。あちらの話としては、やはり「爪によくない」だの「口に入れたら」だったが、
それについては今後保護者である私とパートナーが注意を払えばよいのであって理解している。一番気にしているのは
「みんながしていないからネイルしないでくれ」
という思想なのだ…
と文句を言った記憶がある。そんな“学校的価値観”が私(とパートナー)は何よりも嫌いだからだ。
◆◆◆
何よりも、保育士さんの本音がそこにはない。
1歳児だって、オシャレはしたいだろうし、自分の感性でキレイなものを身に付けたいだろう。
「みんな」である他の幼児たちは、自らの意思で「ネイルしない」ことを選んだのか?幼児本人が過去に、保護者から半ば強制的にネイルされ、「なんかキラキラしてるのはイヤ」とでも感じたならそうだろう。でも、ネイルした形跡のない幼児たちが「していない」からといって、なぜウチの子がネイルしないように指導されねばならんのか。
本気で考えれば、保育士さんたちにも自分達の根拠があまりにも薄弱であることに気づくはずだ。それを、自分達の根拠のなさを自分自身でごまかしてまでネイルを否定するのはなぜなのか。
結局、その時は納得できる返答は聞けず、「本人(幼児たち)の意図しない同調圧力で、ウチの子のネイルに文句を言わないでほしい」ということで落ち着いた。
◆◆◆
一年後。ネイルを敵視する理由の一端が、思いがけず降ってきた。
クラス担当が変わりつつも、さしたる問題もなく新しいクラスで半年ほど経過して、お迎えの際に我が子がポツリ。
「今日、ネイルしないほうがカワイイって先生に言われた~」
そう。例のようにお化粧時のやりとりで、その日はネイルをして登所したのだ。私も「さすがに、いちいち言ってこないだろう」と思っていたので、驚いた。
本人は保育士の意図するものを感じ取っていなかったようで、またチャンスがあればネイルする気満々だったが、私は内心(保育士の発言に)憤った。
ウソつくんじゃねぇ!!
ネイルしないほうがカワイイかどうかは、個人によるだろうに。ネイルしてる人としてない人がこの世に存在するのは、そういうことだろう?アンタら保育士全員の総意が「ネイルしないほうがカワイイ」ならば、保育士全員ネイルできねーだろーが!
もちろん翌日ネイルの件を突っ込んだ。
昨年の話をし、健康被害などほとんどないことも伝え、“学校的価値観”という思想が嫌いなのであって、保育士さんには感謝していること、保護者としてはこの保育所は気に入っていること、自分の子を特別扱いしろというのでなく、他の子がネイルしてきても白眼視するな、という主旨のことをつらつらと。すると、
「ネイルはキレイですし、他のお母さん達も“○○ちゃん(←ウチの子の名)、爪カワイイねー”とは言ってらっしゃるんですけど、やはり爪も呼吸を…」
と言い出したので、私は気づいてしまった。あんなに説明した、爪の健康被害(がほとんど無い)の件を再び言い出したことではない。
◆◆◆◆
そうなのだ。保育士さんたちは、「お母さん達の眼」を気にしているのだ。それも過剰に。
何が一番腹が立つって、
我が子への、他の母親たちの「(ネイルした)爪カワイイねー」を、保育士さんと我々保護者への皮肉と解釈し(ホントに皮肉かもしれんが)、
事前にネイルが「悪いこと」だと刷り込もうとしたことが許せない。
積極的に我が子にネイルを施そうとは思わない。めんどくさいし。でも、偶然とはいえ、子ども本人が“アガる”経験をした貴重な時間を、ヘンな理由で奪わないでもらいたい。
◆◆◆◆◆
結論。
我が家から“考える”ことは奪わせない。
つながりつながり。